2016年暮れに起きた事故ではあって以前からその動向を追ってはいた。
私が所持・使用している 「rEvoⅢ」と同機種を使っている。
報告書にある点において、
「今回の業務遂行において、使用機材は適していない」旨の記載はあるが、
その点に関してはいささか疑問をぬぐえないが、その他の事故原因においては
概ね納得できる内容ではある。
特に、職員同士のハラスメントに関する点、潜水作業者B の意見などが威圧的で
権威勾配が大きく….とあるが、これが歪曲していない情報であるとするのならば、
この点を監視できない組織自体がNGだったのだろうと思う。
一方、ここだけではなく、テクニカルダイビングを実施しているグループ内でも
同様な状況は私自身数多く見てきていて、同じくそれにより事故が起きていることも
認識している。
・ブリーフィングによるロケーションの説明を省く(特にローカルでない人に対しては問題)
・バディチェックを省く
・準備段階からプレッシャーをかけてくる。
テクニカルダイビングは、メンタルトレーニングをも行う訳だが、
それは水中でのトラブルに対してのものであって、準備段階などで無用なプレッシャーをかけて処理能力を低下させておいてからのトラブルは、メンタルトレーニングになるのであろうか?
問題を敢えて作っていく行為には疑問をぬぐえない。
更に、リブリーザーに関しては注意すべきことがOCのそれより多岐にわたることもあるが、優先順位とトラブルに対する確認連動(トラブルが連鎖する可能性もある事も考慮)する必要があると、私自身の事故経験から多くの事を学んだ。
ガスマネージメントに関する考え方も、OCよりパターンが多様化されていてそれを随時スイッチできるか?というのも命題だったりする。この辺を指導している人をほとんど知らない。
コンフィギュレーションなどについても事、最近出てきたSidemount に関しては、シンメトリー(左右対称)のOCに対し、CCRはアシンメトリー(左右非対称)なことよりさらに複雑になり、
加えてSidemount 特有のトランスフォーメーション(タンク移動変形)による重量配分変化および素早い変形なども併せて考えるべきで、その辺の情報共有もない。
(この辺は、私独自に開発したConfigurationを採用していて、世の中的にはまだ一般化されていない。)
話が拡散するのでSidemount CCRの件は別途見解を載せようとは思うけれどもリブリーザーに関しては特有の注意点があって、
それを怠ればクリティカルな事故につながる可能性も多岐に渡ってしまう。
得られるメリットも多い中、パターンが増えたことによる、手段の分岐、選択ミスなどによるトラブルパターンの増大も考慮したうえで、機材のメリット/デメリットを語る必要があり、単純比較で「適する/適さない」の判断はダイバーのスキルレベルも併せて判断すべきで、上記の事故の件もダイバーのスキルによっては、リブリーザーはその現場に適した機材だったのかもしれないとも思える事項だと私は思います。
加えて、事故が多発しているにもかかわらず(しかも原因が同様なものが多い)、指導方針を進化させることなく、通り一辺倒の教え方を続けて、事故が起きれば事故者が「下手だから」で済ませる現状の(少なくとも日本の)テクニカルダイビング指導方針に対する疑問がぬぐえなくも思います。
「テクニカルダイビングがなぜ普及しないか」
という問いに対してネットでは「面倒だから」
なんて簡単に済ませているけれども、日本にテクニカルダイビング、リブリーザーが入り始めて約20年ほどで、何の進化もないのは同様の事故が起きているにもかかわらず、それに対して指導方針を変えなかったこと(進化させなかったこと)、および、環境改善に対する前進もなかったこと、の2点の方が大きな問題だと私は認識しています。